今回紹介する短編小説は、伊坂幸太郎の「フィッシュストーリー」(『フィッシュストーリー』所収)です。伊坂幸太郎さんならではのキャストの使い方が特徴で時間軸を取っ払ったような作品に仕上がっています。時代を超えても人と人とは繋がっていると言うのをまざまざと見せつけてくれる作品です。

フィッシュストーリー

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◆フィッシュストーリーの時間軸

フィッシュストーリーを読む際重要になってくるのが時間軸です。時系列に並べられていないのでどの時代が一番コアなのか一瞬考えてしまうのですが、結局は「どの時代も重要だった」と言う結論に至ってしまいます。

簡単にあらすじを紹介します。

現代では彗星が地球に近づいていてまさに地球が滅びようとしています。話はこの彗星を止める人物(宇宙飛行士が止めるのですが)がどのようにその地位に登りつめたかという流れになっています。

時代は遡り、冴えない男がいました。その男が車で帰宅中音楽を聴いていたのですが、音楽が急にぷつっと切れてしまいます。
これはレコーディングミスということでその部分をカットしただけなのですが、その音楽が途切れた時に外から女性の叫び声が聞こえてしまいます。

恐る恐る近づくと強姦されそうになっている女性がいました。男性はその女性を助けて後に結婚し、子供をもうけます。
ちなみにその子供は彗星を止めることになった宇宙飛行士が女子高生の頃、危険な目にあった際に助けた人物です。

さらに時代は巻き戻って、今度はレコーディングミスになった場面が映し出されます。
売れないバンドマンたちが収録を行っているのですが、ボーカルがいらない言葉を入れてしまったのでその部分は発表できないということに。レコードを出しますが、その部分は無音となりました。

さらにその前の時代背景もあって…。

いくつものストーリーが縦一本でつながっていて、地球滅亡を救う宇宙飛行士が誕生するに至って誰一人必要不可だったという事を考えさせられます。

◆パート一つ一つを見ても面白い

上記でざっと一行で各パートをまとめましたが、パート一つ一つがうまく完結させられていて伊坂幸太郎さんの構成力の高さが伺えます。その面白いパートが組み合わさってさらなる面白みを引き出しているので超おすすめ作品です。

「感動した!」

と言うよりは、

「おー!うまいなぁ」

という感想を持つ人が多いのではないでしょうか。

短編小説にしてはボリュームがあり読み応えがありますが(中編に入るかもしれません)、展開が速く読みやすいので一気に読めてしまうでしょう。きっとどのパートが好きと言う好みも出てきて、

「もっと掘り下げて欲しい!」

と思うことでしょう。キャラクターの一人一人の役割が面白く、個性あふれるとはまさにこういうことなのではないかと思ってしまいます。

◆映画もうまくまとめられている

フィッシュストーリー

伊坂幸太郎さんの「フィッシュストーリー」は映画化もされています。短編小説を普通の映画の長さで表現しているので拍子抜けすることなく見応え十分と感じることでしょう。

話の展開もスピード感があるのに雑にはなっておらず本好きが見ても「うまくできている」と思わせてくれることでしょう。

特に最後はコマ送りで会話がなくフラッシュバックするのですが一、二分で全てが物語られていてもう一度見たい!と思ってしまいます。

伊坂幸太郎さんの作品の多くが映画化されて面白いのですが、何故かあまり映画としての話題性はありません。
ですが、一つ見たらハマるかもしれないので一つだけでも見てみることをおすすめします。本を読むのが苦手な人は映画を見てから本を読んでもいいかもしれませんよ。