今回おすすめする短編小説は、村上春樹さんの『神の子どもたちはみな踊る』に収録されている「蜂蜜パイ」という作品です。『神の子どもたちはみな踊る』は阪神淡路大震災に間接的に関わっている登場人物が描かれていて、「蜂蜜パイ」はそのうちの一つの作品です。震災を乗り越える為のエールが村上春樹さんならではの手法で行われていると思われます。

神の子供たちはみな踊る

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◆蜂蜜パイの登場人物と小説の中の熊のシンクロが凄い

村上春樹さんの「蜂蜜パイ」は主人公と離婚してしまった母と娘が中心となって描かれているのですが、その三人の関係性と作者が作っている話(蜂蜜パイの主人公は作家という設定)である二匹の熊の話が絶妙に絡み合い、短編なのにキャストの構造がなかなか入り組んでいる作品です。

さらに面白いと思える点は、二匹の熊の話単体でも十分読み応えがあり、これだけでも短編小説に出来るのではないかと思えるほどです(実際村上春樹さんでなければこれだけ一つの話として完結させても、そこそこの売り上げを残してしまうのではないかと思います)。
が、さらにそのワンランク上の小説に仕上げたと言っても過言ではないでしょう。

村上春樹さんの作品に出てくる主人公は比較的クールな人物が多いのですが、この主人公は結構熱いものを持っているような感じがしました。熱血というわけではないのですがうちに秘めたものが伝わります。

◆もう一つのパート、「蜂蜜パイ」

「蜂蜜パイ」のコア部分は、主人公と主人公が結婚を考えている女性とその娘(ちなみにその女性は離婚していて旦那さんと主人公は友人という設定です)の話。もう一つのパートは二匹の熊の話です。

ベア

前述の通り、これは主人公が作る小説に出てくるのですが、一匹が蜂蜜を取るのが上手なまさきち、一匹が鮭を取るのが上手なとんきちです。
まさきちは世渡り上手ですが、とんきちは世渡り下手でまさきちしか友達がいません。とんきちはやがて自分の存在に対して疑問を抱き二人の関係性はフェアじゃないのではないかと思ってしまいます。

そこで出たのが蜂蜜に付加価値をつける蜂蜜パイ。この話が小説全体のターニングポイントとなります。二つの話をうまく結びつけて圧巻としか言いようがないでしょう!

◆「かえるくん、東京を救う」も名作。

村上春樹さんの『神の子どもたちはみな踊る』には全部で6話収録されています。いずれも名作ぞろいなのですが、私が特に印象に残っているのが「蜂蜜パイ」と「かえるくん、東京を救う」です。

「かえるくん、東京を救う」は主人公の片桐がかえると共に東京で地震を引き起こすみみずくんと戦い、地震を起こさせるのを阻止しなければいけないという話です。しかしみみずくんが地震を起こすとされる前日に片桐は狙撃され病院のベットに連れて行かれる。

昏睡状態の中かえるの事を気遣う片桐。
その一方で異次元で戦うかえる。

しっかり読んでいないとふわふわした感じになってしまうこと間違いなしです。とても面白い作品なので、読んでみて損はしないはずです。