今回ご紹介する短編小説は砂子浩樹さんの「一億円を手に入れた男たち」です。このお話も前回の「最終面接」同様、星新一さんの『ショートショートの広場9』で読むことができます。
短い作品の中にユーモアが組み込まれていて思わずなるほどと思わされることでしょう。

ショート

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◆一億円を手に入れる

皆さんは宝くじ売り場の前に行ったり、ふとした時に、

「一億円があったらな」

と思うことはないでしょうか。

私は一億円があったらあれ買って、これ買って、あれして、これしてと考えるのですが、砂子浩樹の「一億円を手に入れた男たち」ではさらにその先を行っています。
一億円があったらというより、一億円をどう稼ぐかということに焦点を当てているのです。

登場人物3人が一億円を手に入れる方法は三者三様です。とにかくズルをして一億円を手に入れたい三人のやり取りが面白いので紹介したいと思います。誰もがコツコツ努力しないで一億円を手に入れられたらと思うのですが、この三人も全く同じことを考えています。成功する者もいるので見もののです。

ショートショートで一気に読み進めるため、この先どうなるんだろう?と考えさせるというよりは、いきなり結論が来てしまうのでドキドキはしません。その反面、

「そうきたか!」

と思わされること間違いなしでしょう。

◆砂子浩樹「一億円を手に入れた男たち」の長さについて

話の内容の前に知っておいて欲しいのがこの話の長さです。めちゃくちゃ短いです。1000文字にも満たないほどの長さです。文庫本2ページで収まっています。
タイトルと余白があってそれなので詰めれば1ページで収まってしまうほどです。

そんな超短い文章にもかかわらずユーモアがきっちり入れられていてオチがあって、さらにそのオチが面白い。それゆえ1000文字程度の文章で最高峰に位置していると言えるのではないでしょうか。

『ショートショートの広場』では最後に編者の星新一さんの選評があるのですが、

「こうなるとは」

と言った後に、

「うなされた」

と言っています。やはりこの作品を相当気に入っていて一本取られたと言うのが伺えられますよね。

◆砂子浩樹さんの発想が面白い

「一億円を手に入れた男たち」の面白いところは、三人が三人とも一度は一億円を手に入れるところです。

札束

一人は一気に一億円を手に入れたいと言い、一人は百人くらいから百万円ずつくらい集めて一億円を手に入れたいと言い、一人は一億人から一円ずつ集めて手に入れたいと言います。

一人は十年後に銀行強盗をして一億円を手に入れるが三時間後に捕まってしまいます。
一人は二十年後に詐欺師になって百人くらいから百万円ずつ取って一億円をせしめるのですが、やはり詐欺が発覚して捕まります。
最後の一人は三十年後に大物政治家になって、国民一人一人から一円の臨時増税を課して自分の手元に入れてしまいます。

この結果は難しいことをするのは時間がかかるがリスクが少ないということを暗示していて、読むものを妙に納得させてくれます。しかもこれを1000文字弱で行えるのはやはりうまい文章のまとめ方をしているなと思わざるをえません。

1000文字程度のエンタテインメント。ぜひ一度読んでみていただきたいおすすめの作品です。