今回おすすめする短編小説は、戸島竹三さんの「最終面接」です。かなりの読書好きでもこの作品を知っている人は少ないと思います。それもそのはずこの話は星新一さんが編集した『ショートショートの広場9』に収録されている話だからです。しかしこの話一番大事なものは何かと言うことを面白おかしく描いていてユーモアあふれる作品です。

ショート

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◆始まりからスピーディー

戸島竹三さんの短編小説「最終面接」は星新一さんが『ショートショートの広場9』に収録した話の一つです。最近ではショートショートが減ってしまいましたが、以前は星新一さんを中心に人気のある分野でした。

戸島竹三さんの「最終面接」は最初から最後までスピーディーな展開で描かれていて息つく暇を与えない爽快感100%のショートショートです。

内容は主人公が会社の最終面接に行く事が描かれています。会社に面接に行くだけなのに主人公の前に無理難題が降りかかってくるのですが、そのたびに主人公は我先にと周りの人の迷惑を考えずに突き進みます。

「こいつに悪い事が起きればいいのに」

と読者は考えるのですが、読む進めると第二、第三の矢が放たれて来るので、考えるというよりも突き進まされて読むと言う雰囲気に近くなってくるでしょう。5分もあれば読めてしまう超短編作です。

◆最後のオチが面白い

「最終面接」ではどんでん返しがあります。

まず、会社に来るまでの行いを見ていたと面接官に言われてしまいます。自分が他人の迷惑を考えずに突き進んできたことを見られたと思った主人公は面接に落ちてしまうと思うのです。

面接

そんな矢先にまさかの合格通知。合格の理由は、

「何があっても突き進む精神は我が社に必要」

というところを買われたからです。会社側は人間性がどうあれ任務を遂行できる人間が欲しかった。そして主人公は無理難題が与えられても自分が遅刻しない様に周りを蹴落としてでも会社に来る人間。まさに会社側が求める人材でした。

あっけなく内定をもらった主人公は喜びます。しかしその直後に、

「今から内戦が起きている国に行ってもらう。なに君なら何があっても突き進めるさ」(←言葉は正確ではありませんが、こういうことを言っています)

と言われ途方にくれる主人公。話はそこで終わりです。

◆「主人公目線」と「読者目線」で真逆の心理をつかれる

戸島竹三さんの「最終面接」の凄いところは、

主人公目線に立つと、

「自分さえ良ければいい」→「会社に来るまでの行動を見られていてまずいと思う」→「内定を貰って嬉しい」→「配属先が内戦が起きている地域」→「途方にくれる」と言う流れで構成されているのですが、

読者目線に立つと、

「主人公に天罰が下ればいい」→「面接官にひどい態度を見られていた。しめしめ(これは面接に落ちるだろう)」→「主人公が内定を受け、なんでだよ!と思う」→「勤務地が内戦が起きてる国とは一本取られた!」

と真逆の心理をつかれます。それでいて読んだ後の不快感0。逆転に次ぐ逆転というストーリーに呆然としてしまうほどです。この短い文章の間にこのハイクオリティの逆転劇を生んだ技術はまさに圧巻です。さすが星新一さんに選ばれた短編小説。ぜひ一読をおすすめします。