今回ご紹介する森重孝昭さんの短編小説「指定席」は(も)、星新一さんが編者をしている「ショートショートの広場9」で発表されている作品です。この作品はまさかのところで親子のつながりがあり思わず苦笑してしまう作品です。

ショート

(https://www.amazon.co.jp/)

 

◆ビジネスという意味での視点が面白い

ノルマに覆われている会社員。売り上げを伸ばしたい会社役員。何か打開策がないかと思っている社長。…いずれにせよ何か新ビジネスはないかと思っている人は多いのではないでしょうか。

森重孝昭の短編小説「指定席」は、そんな新ビジネスを森重孝昭自身が打ち立てた手法が組み込まれ、物語が進んでいきます。

そのビジネスとは朝の通勤の電車の席取りビジネスです。

席取り

誰もが快適に座りたいと思っている朝の満員電車。そんな悩めるサラリーマンたちの欲求を満たすために席を取るバイトを雇い、お金を払った顧客に席を譲ると言うなんともユーモア溢れるビジネスを組み込んできました。

お金を払った顧客は座っている人から席に案内され、嫌な通勤ラッシュを快適に過ごします。「指定席」の要の部分がこのビジネスの発想で満員電車で座れることのありがたさが身にしみるほど伝わるように描かれています。

◆星新一さんの選評はあまり良くない

『ショートショートの広場』の巻末に編者である星新一さんの選評が書かれているのですが、実はこの作品はあまりいい評価をえていません。それはもしかしたら星新一さんのショートショートの意図が、

「短く端的にまとめられているのが良いショートショートである」

というところにあるのではないかと思います。

確かに森重孝昭さんの「指定席」は発想が面白く、なかなか思いつかないアイディアを出しているなと言う感じではあるのですが、若干間延びしているかな?と言う感は否めません。
そこが星新一さんがいい評価をしなかった点なのではないかなと思うところでした。

しかし、星新一さんはショートショートの神様であるため、気になる点が色々あるのだと思います。一般の方が見たらそれでも短くまとめられていて、発想も面白いため、「抜群に面白い」と思う作品なのではないかと思います。

◆まさかのところで親子のつながりが。でもそれは全く感動ではない

普通親子がまさかのところで繋がっていたら大なり小なり感動を与えてくれます。例えば、あれをしてくれたのは実は父親でした。
という場合それを知った息子は泣いてしまう。そんなケースが多々あります。

しかし、この「指定席」は父親がお金を払って満員電車でも座れる権利を得たのと同時に、息子は席を取るバイトをしていたのです。
しかもあまり多くは触れていませんでしたが、父親の払う金額より息子のバイト代の方が少ない(マージンが取られているので当たり前といえば当たり前ですが)ため結局この親子は損をしているというのを暗にほのめかしています。
この些細なブラックユーモアも面白く、長い小説を読むのが苦手な人におすすめしている作品です。